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「白い約束」の退化


■日立が「イオン洗浄」をやめた?!

 日立の全自動洗濯機「白い約束」は、洗濯機に軟水器を内蔵して、洗濯時に軟水を使うことで、硬度成分の影響を受けないため、高い洗浄力を実現した洗濯機です(イオン洗浄)。さらに、2000年の新モデルでは、すすぎ時にも軟水を使い、石けんカス(洗剤カス)の発生を防ぎ、衣類への石けんカスの残留を大幅に抑えるという(イオンすすぎ)、石けんユーザにとっては画期的な洗濯機でした。
 実際、暮らしの手帖や、国民生活センターの性能評価試験でも、イオン洗浄は常にトップの洗浄力を誇っていました。消費者が選ぶ家電品の人気・満足度調査でも、「白い約束」シリーズは、上位を独占しています。
 
 しかし、2001年の新モデルでは、イオン洗浄・イオンすすぎが廃止されました*1注意

 紛らわしいのですが、新モデルは「浸透イオン洗浄」という方式が採用されています。白い約束ファンや、粉石けん使用者で、次は「白い約束」を買おうと考えていた人には、ショッキングなモデルチェンジです。
 
 日立のホームページ

■浸透イオン洗浄とは
 
 「白い約束」新モデルが採用した、浸透イオン洗浄とはどのような方式でしょうか?

1.洗剤を溶かすための容器が洗濯機に付いている。まず、洗剤をこの容器に入れる
2.容器に水が注がれ、モータで回転することで洗剤を溶かし、標準使用濃度の10倍くらいの濃い洗剤液を作る。
3.洗濯物に、その濃い洗濯液をふりかける。洗剤の濃度が濃いので、衣類に早く浸透し、汚れを浮かすことが出来る。
4.注水し、洗濯を始める。このときの洗剤濃度は、標準使用濃度になる。ただし、注水する水は、ただの水道水で、イオン洗浄・イオンすすぎは行わない。
 
 早い話が、洗剤を自動的に溶かしてくれて、部分洗いの時にするように濃い洗剤液を、あらかじめ汚れにしみ込ますということです。
 「イオン洗浄」じゃないのに、「浸透イオン洗浄」という名前を残したのは、いままで評判の良かった「イオン洗浄」のネーミングを残したかったからでしょう。
 苦しい説明を見つけました、「濃い洗剤液を作るときは、合成洗剤に含まれている硬水軟化剤が、カルシウムイオンなどを効果的に封鎖するのでイオン洗浄と言う」そうです。
 
 ちなみに、この浸透イオン洗浄は、粉石けんでは使うことが出来ません。粉石けんを使う人は、今までと同じように溶かして入れる必要があります。おそらく、洗剤を溶かす仕組みは、合成洗剤を溶かすことを想定しているので、粉石けんでは上手く溶けないためだと考えられます。
 
■粉石けんユーザにとって、新しい「白い約束」は必要か?
 
 「イオン洗浄・イオンすすぎ」は、粉石けんユーザをターゲットにして開発されたものではありませんが、硬度に強いとされている合成洗剤でさえ、イオン洗浄で洗浄力が上がります。硬度成分に弱い粉石けんを使う場合は、著しく洗浄力がアップし、イオンすすぎによって石けんカスの発生を大幅におさえることができ、衣類への残留や、黒カビの発生をおさえるのに効果的です。
 
 新しい「白い約束は」自動的に洗剤を溶かしてくれます。
確かに、「洗濯で洗剤をちゃんと溶かす」のは重要な課題です。いくら、イオン洗浄といっても、粉石けんをちゃんと溶かさなければ、満足な洗濯は出来ません。
 冬の冷たい水で洗濯するときは、洗剤が溶けている、溶けていないでは、洗浄力は大きく違います。これが、日立がイオン洗浄・イオンすすぎを廃止してまでも、新モデルを投入した理由の一つでしょう。「浸透イオン洗浄」+{イオン洗浄・イオンすすぎ」が理想的な組み合わせですが、コスト面で商品開発しなかったのでしょう。
 
 洗剤を溶かすのに時間をとりたくない、スイッチ一つでポンがいい、という手抜きユーザ、または、洗濯初心者にとっては、適当に手を抜いても、そこそこに仕上がる洗濯機だと思います。
 
 しかし、自分できちんと粉石けんを溶かすことが出来る、襟や袖の部分汚れは、液体石けんをスプレーしてきちんと落とす等、洗濯物に応じて柔軟に対処することのできるベテランにとって、新しい「白い約束」は、あまり魅力的ではありません。この程度のことは、洗濯技術を向上させることで、多少時間をかければ何とでもなることです。しかし、「イオン洗浄・イオンすすぎ」は、ハード的に洗濯機に内蔵されていなければ、どうすることもできません。粉石けんユーザーにとっては、「白い約束」は退化したと言わざるを得ません。
 
 「次は『白い約束』を」、と考えられていた人は、今なら、まだ在庫があり、かつオープン価格になって安く購入出来るので、旧型の「白い約束」をお勧めします。

*1追加情報 (2002.12)
日立はイオン洗浄、イオンすすぎを全くやめたわけではないようです。
カタログの後ろの方ですが、今でも製品はあるようです。
http://kadenfan.hitachi.co.jp/hkj0701k.htm