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粉石けんの選び方


■どんな石けんを使いたいか

 みなさんは粉石けんを選ぶとき、どのような点を重視されますか? MLで意見を聞いたところ、多い順に以下のようになりました。

  1.汚れが良く落ちる
  2.エデト酸塩や香料などの添加物が含まれていない
  3.石けんカスが残りにくい
  4.硬度が高くても、ちゃんと泡立って使える
  5.冷たい水にも溶けやすい
  6.近くのスーパー、自然食品店、生協などで入手しやすい
  7.泡立ちがよい
  8.粉飛びが少ない
  以下、値段が安い、ふっくらと仕上がる、泡切れがよい、香りがよい と続きます。

 粉石けんは、探してみればいろいろなメーカーのものが入手できます。しかし、それぞれの粉石けんは性質が異なっていて、なかなか自分の求める物が手に入らないことも多いです。 いや、それ以前に、粉石けんの性質を客観的に比較した例はほとんど無く、いったいどの粉石けんを選んだらよいか、よくわかりません。
 そこで、今回、MLのメンバーの協力で、様々なメーカの粉石けんを入手し、粉石けんの性質を調べる実験を行ってみました。この結果を参考にして、自分にあった粉石けんを選んでください。
 
■実験した粉石けん

 今回実験した粉石けんは以下の通りです。原料油脂の違い、炭酸塩などの添加物の違い、炭酸塩の配合量の違いなどで選びました。


 注意: まるは油脂化学の粉石けんは現在CMCは配合されていません(2008.10)

 これ以外にも多くのメーカの粉石けんがありますが、成分がわかれば、今回試験した粉石けんと比べることで、おおよその性質がわかります。例えば、グリーンコープの「しゃぼん」はボーソー油脂のOEMなので「米ヌカ石けん」と性質は似ています。生活クラブ生協の粉石けんはエスケー石けんのOEMで、高密度石けん(URUOi)と性質は似ています。通販生活で販売している「エサンデス」はパックスナチュロンに酸素系漂白剤を添加した物で、性質はナチュロンと似ています。

■かさ高さ(密度)と粉飛び

 粉石けんは同じ重さでも「かさ」は違います。それぞれの粉石けんの、1mLあたりの重さ(密度)を調べてみました。密度が高いものは重いということになります。しかし、密度ではピンとこないので、多くの粉石けんの標準使用量である40gを200mLのカップに計り取ったときの容量で示してみました。

 パックスの製品(ナチュロン、ポート、500番)やスノールは、いずれも中空顆粒で、粒が大きく軽い粒です。一方、しらかば、高密度石けん、ローブなどは細かい粉末になっています。同じ40gでもナチュロンはカップ半分以上の105mLもあるのに対して、しらかばはカップ4分の1の50mLしかありません。

 このことから、粉石けんを計り取るときに注意が必要であることがわかります。たとえば、しらかば用に使っていた計量スプーンでナチュロンを計りとった場合、半分の量(重さ)しか計り取れていないので、石けんの量が不足して、泡立ちません。また、逆の場合は使いすぎてしまいます。
 自分の使っている粉石けん専用の計量スプーンを使うか、または、一度計量スプーンに一杯入れた時の重さを量っておき、正しい量をつかんでおいてください。



 粉飛びは、微粉末の粉石けんほど多くなります。実際使ってみても、しらかばの3製品(しらかば、SS、2000)は粉飛びが多い粉石けんでした。また、スノールも粉飛び、刺激が多いとの意見がありました。

■溶けやすさ

 冬場で洗濯に用いる水の温度が低いとき、粉石けんが溶けにくくて困ります。冬場はやはり溶けやすい石けんを使いたいと誰もが考えると思います。
 粉石けんの溶けやすさは、次のように実験しました。
 写真に示した、500MLの計量カップに水中モーターを取り付けます。水500mLと粉石けん2gを入れて2分間かき混ぜます。かき混ぜた後、コーヒー用フィルターでろ過し、ろ紙を乾燥させて、溶け残った粉石けんの重さを量りました。
 水は水道水(硬度約80)、水温は10℃としました。水温は、あえて冬場の冷水を想定し、低温で行ったので、粉石けんの溶けやすさは、はっきりわかります。また、かき混ぜる条件は、このような小さな容器で激しくかき混ぜるので、ちょうど洗濯機を低水位でかき混ぜたときに相当します。
 
粉石けんの溶けやすさを調べる実験
 
水500mLと粉石けん2gを入れて、2分間かき混ぜる。
石けん液をコーヒーフィルターでろ過し、溶け残った
石けんの量を求めた。

 
 結果は上に示したとおりです。溶け残りは、はじめに入れた量の何パーセントが溶けなかったで示しました。
石けんの街はもっとも良く溶けて、溶け残りは、わずか2%でした。一番溶けにくかったのはパックスナチュロンで27%も溶け残りがありました。

 溶けにくい石けんである、ナチュロン、スノール、500番、しらかば2000、ポート、エスケー高密度などは、原料油脂に牛脂、ラード、パーム油といった融点の高い油脂を使っています。一方、溶けやすかった、石けんの街、そよ風、米ヌカ石けん、自然丸などは、原料油脂に菜種油、大豆油、米ヌカ油などの融点の低い植物性油脂を使っています。

 冬場の低水温では、動物性油脂やパーム油が原料の石けんは、非常に溶けにくいことが分かります。このような石けんは、洗濯機を低水位で激しくかき混ぜても完全に溶けることは無いため、泡立ちが悪く、ついつい使いすぎてしまいます。使いすぎた石けんは溶け残りとなって、石けんカスが大量に発生したり、洗濯機のカビの原因になります。
 このような石けんを使う場合は、あらかじめ、洗面器、風呂桶、バケツなどに1リットルほどのぬるま湯(30〜40℃)を用意して、泡立て器やプラスチック製のへアブラシなどで、かき混ぜると、1分で完全に溶かすことが出来ます。一度、溶けてしまえば、冷たい水に入れても、完全に溶けているので大丈夫です。低水位でかき混ぜる方法を過信せずに、冬場は粉石けんを溶かすのに、少しだけ工夫してください。

■泡立ち

 泡立ちは、粉石けんを、0.05、 0.1、 0.15、 0.2、 0.4%の濃度に調製し、40mLをペットボトルに入れ、30秒間激しくかき混ぜ、1分間放置して、泡の高さを測りました(単位はミリメートル)。
 水は水道水(硬度約80)、水温は10℃としました。粉石けんの溶け残りを防ぐために、あらかじめ、ぬるま湯で完全に溶かした濃い石けん液を、10℃の水道水に加えて、濃度を調製しました。
 
 粉石けんの濃度と泡の高さ(mm)



  
 



 濃度と粉石けん使用量の関係は、例えば標準使用量が水30リットルに40gの粉石けんの場合、標準使用量に溶かした場合の濃度は0.13%になります。グラフ中の、濃度0.15%は標準使用量より約1割多め、0.2%は標準使用量の1.5倍、0.4%は標準使用量の3倍になります。

 泡立ちが最も良かったのがスノールで、そよ風、ポート、まるは、高密度と続きます。泡立ちが悪かったのはしらかばSS、しらかば2000、500番、ローブでした。

 泡立ちが良かった粉石けんは、原料油脂にヤシ油またはパーム核油を使っています。これらの油脂は耐硬水性が高く、泡立ちがよいとされています。スノールは牛脂を使っており、低温で、硬度が高い水は苦手のはずですが、完全に溶かせば低温でも十分泡立つことが分かりました。
 泡立ちが悪かった、しらかばSS、しらかば2000、500番は、パーム油、牛脂、ラードが原料で、これらの油脂が原料の石けんは、たとえちゃんと溶けていても泡立ちが悪いことが分かります。

 次に、同じだけ泡立ちを得るために、どれだけの石けんが必要かを計算してみました。グラフから、泡の高さが10mmになる濃度を求めて、その濃度にするためには、水30リットルにつき何グラムの粉石けんが必要かを計算しました。これは、硬度80、水温10℃における、各粉石けんの実質的な使用量になります。



 この結果を見ると、そよ風が一番少ない量で泡立つことが分かります、次にナチュロン、スノール、高密度と続きます。しらかばSS、しらかば2000、500番、ローブなどは泡立てるのに多くの量を必要とします。

■耐硬水性

 粉石けんの泡立ち、洗浄力は、使う水の硬度に大きく影響を受けます。硬度の高い地方で粉石けんを使っている場合、泡立ちが悪い、石けんの量が大量に必要、石けんカスが出る、洗濯機にカビが発生するといった悩みがある方が多いと思います。ここでは、粉石けんの泡立ちと硬度の関係を実験してみました。
 実験方法は、先の泡立ちの実験と同じです。粉石けんの濃度は0.2%(およそ標準使用量の1.5倍)としました。水の硬度は、硬度80(関東や九州程度)、硬度40(大阪や名古屋程度)、そして硬度0の軟水を用いました。
 


 グラフは、硬度0の水での泡立ちを青、硬度40の水での泡立ちを赤、硬度80の水での泡立ちをクリームで示しています。
全体に泡立ちが良く、特に硬度が高い水でも泡立ちの良い粉石けんは、耐硬水性が高いと言えます。

 そよ風、自然丸、スノール、まるは、高密度、ポートなどが、硬度が高くても泡立ちがよい、すなわち石けんとしての能力が高いと言えます。一方、しらかばSS、しらかば2000、500番、ローブなどは、硬度の高い水には弱い粉石けんと言えそうです。

■洗浄力

  準備中(後日追加します)

■値 段

 値段についてまとめてみました。それぞれの石けんの定価、100gあたりの値段。そして、泡立ちの実験で求めた、水30リットルあたりの実質的に必要な量(g)と、その量に相当する値段です。つまり、1回の洗濯に、水30リットル使うときは、1回につきこの値段かかることになります。

 1回の洗濯あたり、一番経済的なのは自然丸で、しらかば、そよ風、高密度と続きます。最も高いのはスノールで自然丸の倍以上します。ナチュロン、500番、しらかばSS、しらかば2000も、実質的に多くの量必要とするので高くなります。

 また、粉石けんの入手しやすさも重要なポイントです。粉石けんは日常的に必要な消耗品なので、近くのスーパーや生協で入手できるのが基本的な考えです。通販でないと入手できない物は送料がかかり、実質的に割高になります。まとめて買うと送料がかからない場合もありますが、輸送のためエネルギーを使い、石油資源の枯渇と地球温暖化に一役買うことになります。環境のために石けんを使うと考えるなら、粉石けんはできるだけ地元で入手しやすい物を選びたいと思います。



■総合評価



シャボン玉スノール 今回テストした中では唯一の炭酸塩無添加石けんです。やはり牛脂主体の石けんなので冷水には溶けにくい点は注意が必要です。完全に溶かせば泡立ち、耐硬水性も良く使いやすい石けんです。しかし、価格はテストした石けんの中で一番高価でした。

ミヨシそよ風 総合バランスは最も良い石けんの一つです。一部の人はアミノ酸系の分散剤が入っている点を問題視していますが、この石けんの入手しやすさ、使いやすさは、多くの人が石けんを使うのに優れた点です。

パックス500番 中空粒子で粉飛びが少ない点以外は、あまりおすすめする点はありません。

パックスナチュロン この石けんも取り立てておすすめする点はありません。

パックスポート パックスシリーズの中では、もっとも使いやすい製品です。

ボーソー米ヌカ石けん 米ぬか油は唯一国産でまかなえる油です。再生産可能であり、パーム油のように熱帯雨林を切り開いて生産するという生産段階の環境負荷も少なく、石けんの原料油脂としては優れています。石けんの性質もバランスが取れています。

エスケー高密度(URUOi) 微粒子で粉飛びがやや多い点を除けば、すべての点で優れた石けんです。

ねば塾しらかば 廃油石けんです。植物性油脂主体なので、不飽和脂肪酸が多く、溶けやすく、比較的バランスの取れた石けんです。石けんの原料油脂は食用油脂と競合することは昔から知られており、今後、食糧問題が深刻になると、石けんの原料油脂を廃油に求めるのは自然な流れになるかもしれません。廃油石けんの可能性を示した石けんとして意義はあると思います。

ねば塾しらかばSS、2000改 同じねば塾の石けんでもこの2種はパーム油が原料です。廃油石けんを扱うねば塾が、なぜ生産段階で環境負荷の大きいパーム油を原料にした石けんを作るのか理解に苦しみます。また、これらのパーム油主体の石けんは、全体に性能が悪く、使いにくい石けんに仕上がっています。

手賀沼石けん 廃油石けんです。耐硬水性にやや問題があるので、硬度の高い地方ではやや使いにくい石けんですが、全体にバランスは良く、廃油石けんの可能性を示した石けんです。

自然丸 この石けんも全体のバランスはトップクラスの石けんです。初心者でも使いやすい石けんに仕上がっています。

暁石鹸ローブ 一部にファンの多い石けんですが、とりたてて特徴もない石けんです。耐硬水性、泡立ちが悪いので、硬度の高い地方ではおすすめできません。

まるは油脂 この石けんもバランスがよく、使いやすい石けんです。ハーブの香りがさわやかです。