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塩素系漂白剤は要注意


■混ぜるな危険

 塩素系漂白剤は、強い酸化力と殺菌力があるため、家庭でも衣類のしみ取りや漂白、湯飲みなどの茶しぶ落とし、ほ乳瓶、食器やまな板の除菌、更にカビ取りの洗剤などの用途に広く使われています。
 これらの塩素系漂白剤の容器には必ず赤で「混ぜるな危険」という注意書きがあるのは、皆さんご存じでしょう。塩素系漂白剤は酸性の洗剤などと混ぜると、猛毒の塩素ガスが発生します。塩素ガスは、戦争で毒ガスとしても用いられたことがある猛毒のガスです。実際、塩素系漂白剤で主婦が死亡する事故が起こったことから、現在のような表示がされるようになったいきさつがあります。それでは、この塩素系漂白剤についてもう少し詳しく勉強してみましょう。

■次亜塩素酸ナトリウム

 塩素系漂白剤の主成分は次亜塩素酸ナトリウムという化学物質です。次亜塩素酸ナトリウムは酸性にすることで、分解して塩素ガスを発生するので、漂白剤にはアルカリ剤として水酸化ナトリウムが含まれています。塩素系漂白剤の危険性は塩素ガスが注目されがちですが、実は水酸化ナトリウムも危険な化学物質です。水酸化ナトリウムは強アルカリ性の物質で、タンパク質変性作用が強く、間違って目に入った場合失明の恐れもあります。化学系の実験を行う現場では、その取り扱いは青酸カリより注意が必要ともされています。
 塩素系漂白剤を使用するときは絶対に原液を素手では扱わないようにし、もし手に付いた場合は、直ちに大量の水で洗い流してください。また、洗剤の誤飲は常に家庭での事故の上位を占めています、小さな子供のいる家庭では、絶対に子供の手が届く場所には放置しないよう注意が必要です。

 混ぜるな危険と注意書きがありますが、いったい何と混ぜると危険なのでしょうか?
  1. 酸性の洗剤  トイレ用の洗剤は酸性のものが多いので要注意です。それらの洗剤にも「混ぜるな危険」の表示があります。
  2. お酢やクエン酸  石けん生活を送っている人の中には、お酢やクエン酸を使っている方も多いと思いますが、これらは立派な「酸」です。カビ取り洗剤を使った後、中和しようと思って、お酢などをスプレーしたら危険です。
  3. カビ取り洗剤をお風呂場で使って、長時間放置した後も危険です。空気中の炭酸ガス(酸)がカビ取り洗剤のアルカリ剤を中和して、自然に塩素ガスが発生します。カビ取り洗剤を使うときは、必ず換気扇を回してください。

■下水に流すときはどうすればいい

 漂白剤を使った後の廃水を下水に流しても大丈夫でしょうか?
トイレで酸性の洗剤を使い、洗濯で塩素系漂白剤を同時に使った場合、下水配管の構造によっては、一時的に廃水が溜まる部分があり、そこで塩素系漂白剤と酸性の洗剤が混ざる場合があります。塩素系漂白剤を使った後は十分水を流す、酸性の洗剤は、場所が違っても同時には使わない方が安全です。

 次亜塩素酸ナトリウムは強い殺菌力があります。大腸菌を使った実験では、60ppm(0.006%)という低濃度でも1分で完全に死滅するとのことです。市販の塩素系漂白剤の標準使用濃度は100〜600ppm程度ですから、十分に強い殺菌力があります。下水道が整備されている場合は、塩素系漂白剤の廃液を流したとしても、下水道の中で十分に薄められ、下水中含まれる多くの有機物を酸化することで、塩素系漂白剤は短時間で活性を失います。

 でも、ちょっと注意してもらいたいのは、合併処理浄化槽を使っている場合です。合併処理浄化槽は一軒または数軒の家ごとに設置されている小さな下水処理設備です。この場合は、廃水は下水道ほど薄められることがないので、殺菌力を持ったまま流れ込みます。少量なら問題ないとされていますが、シーツやバスタオルの漂白などで、何十リットルもの大量の廃水を流した場合、一時的に浄化槽内の菌にダメージを与え、悪臭や水質の悪化を引き起こすことが考えられます。

 次亜塩素酸ナトリウムは、観賞魚用のハイポ(チオ硫酸ナトリウム)で簡単に中和し、無害にすることができます。中和に必要な量は、塩素系漂白剤キャップ一杯(24ml)につき約5g(40粒程度)です。合併処理浄化槽を使っている場合は、中和して流す方が、浄化槽の機能を低下させません。
 この方法は、漂白した衣料をすすぐときにも使えます。ハイポを入れると、衣類に塩素臭が残らないし、必要以上に脱色されたり、布が傷むのを防ぐことができますから、一度試してみて下さい。