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洗濯機のカビは、アレルギー性皮膚炎の犯人?


■また朝日新聞か・・・

 2002年5月6日の朝日新聞朝刊に、「アレルギー性皮膚炎の犯人、洗濯機のカビ?」というタイトルの記事が掲載されました。石けんユーザにとっては、なんともショッキングなタイトルです。
 記事内容はこちら

 昨年の、「石けんも地球を汚す?」に続いて、またも、世間を騒がせるだけの無責任なタイトルを付けた記事です。
どうして、朝日新聞は、物の本質を理解できなくで、目先の受けをねらった記事を書くのか不思議になります。

 記事の内容を引用してみると
・アレルギー性皮膚炎の原因の一つとして、洗濯機内で増殖するカビが疑われ始めている
・洗濯機の中が大量のカビで汚染されていることがわかった
・洗濯水1mL中に最多で4566個の胞子が見つかった
・重度のアトピー性皮膚炎の患者宅で洗濯機が故障して新品にしたとたん、症状が大きく改善した臨床例があった
(引用終わり)
 まるで、「・・・の恐怖」、「恐るべき・・・」 といった非科学的な「トンデモ本」と同じ口調で、いたずらに消費者の不安を煽る表現が続きます。

 さて、石けんユーザの方は、この記事を読んで、どのように感じられましたか?
・石けんは合成洗剤より溶け残ることが多い
・溶け残った石けんや石けんカスにカビが生えて、真っ黒なピロピロワカメが発生する
・きっと、合成洗剤より、石けんの方がカビが多いに違いない
・アトピー対策に石けんを使っているのに、これでは逆効果なのでは?
などと、不安な気持ちをもたれたのではないでしょうか?

 本当に石けんを使うと、アレルギー性皮膚炎が増えるのでしょうか?

■洗濯機はどれくらいカビ汚染されているか?

 朝日新聞の記事は、大阪市立環境科学研究所の濱田さんがされた研究をもとに書かれています。と、いうより、濱田さんの研究報告の中から、消費者の恐怖を煽る部分だけを抜き出して書かれています。
 元の研究報告は、「環境監視84号:2002.4.10」に掲載されています。興味ある方は、原文を取り寄せて見られるといいでしょう。
発行:医療法人南労会・環境監視研究所 http://www4.ocn.ne.jp/~kanshi

濱田さんの研究報告から、朝日新聞に書かれていない部分を引用します

 洗濯機の使用期間とカビ汚染との関係を調べた。新品では9.7/mlに対して、1〜4ヶ月では11.7/mlとほとんど差は見られなかった。使用開始5ヶ月後から、洗濯水中のカビ数が100/ml以上のものが認められ、5ヶ月から1年のものでは平均カビ数も51.5/mlに上昇した。

 洗濯頻度と汚染カビ数の関係を調べた。毎日洗濯する場合には、洗濯水の平均カビ数が77.0/mlに対して、毎日しない場合は、43.2/mlとより少なかった。
 洗濯機のカビ汚染に最も大きな影響を与えるのは、洗濯機に対する水分の供給であると考えられる。
 洗濯後、洗濯槽の蓋を開け放しておく場合と、閉める場合の平均カビ数を比較した。洗濯水の平均カビ数は、開けている場合には、52.1/mlに対して、閉めておく場合には84.0/mlと、閉めている方がカビは有意に多かった。

 洗剤とカビ汚染の関係を調べた。洗濯水の平均カビ数は、合成洗剤の場合が63.5/ml、粉石けんの場合には50.2/mlと、有意の差は認められなかった。ただ、サンプル数は多くないが、液体石けんの場合に、カビ汚染が非常に多かった(257.2/ml)。
 粉石けんはカビの栄養になり、洗濯機のカビ汚染の原因であると言われている。しかし、この調査では、そのような結果は得られなかった。

■カビ対策はどのようにすればいいか

 朝日新聞の記事のタイトルでは、あたかも、洗濯機のカビがアレルギー性皮膚炎の原因であるとも取れますが、アレルギー性皮膚炎の原因はカビ以外にも、ダニ、化学物質、ストレス、活性酸素など複雑な要因が絡んでおり、洗濯機のカビだけが犯人とは限りません。因果関係も調査されたわけではなく、今は、一つの原因ではないかと疑われ始めた段階です。

 しかし、アレルギー性皮膚炎やアトピーの人にとっては、避けられるなら、避けるにこしたことはないので、次のような対策で、カビを防げばいいと思います。

(1) 当たり前の話ですが、石けんはきちんと計って、ちゃんと溶かして使うことで、溶け残りや、石けんカスを少なくすることが出来るので、洗濯機への付着を少なくすることが出来ます。
(2) 液体石けんは溶け残りがなく、カビが発生しにくいと思われがちですが、濱田さんの実験では、非常に多くのカビが発生しています。液体石けんは、アルカリ剤が入っていない物が多いため、洗浄力が弱く、石けんカスが発生しやすいため、カビの発生が多いと考えられます。どうしても液体石けんを使いたい場合は、炭酸塩を併用した方がいいと思います。
(3) 洗濯が終わったら、洗濯機の蓋を開けたままにしておく。
(4) 3ヶ月に1回、洗濯槽を掃除する。洗濯槽の掃除のしかたは、お風呂の残り湯(暖かいうち)を洗濯機に入れ、酸素系漂白剤500g、粉石けん50gを入れ、かき混ぜてよくとかし、そのまま1晩放置する。次の日、洗濯機を回した後、よくすすぐ。
(5) 軟水を使うと、石けんカスがでないので、いつまでも洗濯槽はきれいです。ちなみに、うちでは、2年近く洗濯機を使っていますが、カビは見たことがありません。