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石けんは合成洗剤より良く落ちる


 合成洗剤のCMは日常的にTVに流れ、「合成洗剤の洗浄力は昔ながらの粉石けんより優れている」「合成洗剤で洗うと真っ白になる」と思っていませんか?
 でも、実際に洗濯してみると合成洗剤は宣伝ほど汚れが落ちないと思いませんか?
 それでは、合成洗剤と石けんの洗浄力を客観的に比較してみましょう・

■牛脂溶解量の比較
 石けんや合成洗剤の洗浄力を比較する方法の一つに「油をどれだけ溶かすことができるか」を見る方法があります。
 溶解度試験にもいろいろな方法がありますが、実験室でいくら実験しても、実際の洗濯とは条件が異なります。
 そこで、この実験は、実際の洗濯機で、標準使用量の粉石けんと合成洗剤を使って行いました。牛脂をプラスチックの容器に入れた物を洗濯機の壁に固定し、10分間洗濯機を回しました。洗濯機を回す前後に牛脂の質量を測って、その差から牛脂溶解量を求めました。
 実験に用いたのは市販の粉石けん17種類と合成洗剤8種類です。水は30リットル、水温は30℃で行いました。

さて、結果は

 全部で25種類の粉石けんと合成洗剤を比べると、粉石けんの方が、1桁かそれ以上牛脂を良く溶かすことがわかります。
 油を多く溶かすことができれば、洗浄力もいいはずです。この結果から、粉石けんの方が合成洗剤よりかなり洗浄力が良いということが予測されます。

■炭酸塩の効果
 石けんはアルカリ性では洗浄力が高いが、中性や酸性では洗浄力を失うという話を良く聞きます。そのため、粉石けんには洗浄力を高めるために炭酸塩(炭酸ナトリウム)が加えられています。
 最近、自然志向ブームの中、洗濯用粉石けんにも無添加のものが市販されています。

 それでは、炭酸塩を加えていない100%石けんは、どの程度の洗浄力があるのでしょうか?
上の実験と同様に、台所用の液体石けん(脂肪酸カリウムが主成分)を用いて牛脂溶解量を調べてみました。また、比較のために炭酸カリウムを加えて(10g/30リットル)実験してみました。


 台所用液体石けんのpHは8.34〜9.33と、洗濯用粉石けんに比べて低めです。牛脂溶解量は、やはり低く、これでは油分の多い食器洗いには使いにくいことが予測されます。
 ところが、炭酸塩を添加したら牛脂溶解量が数十倍に高くなりました。やはり、石けんはアルカリ性で本来の力を発揮できるようです。

 一方、台所用合成洗剤は、一部、台所用液体石けんより牛脂溶解量が大きい物もありましたが、アルカリ性での石けんよりは低い値でした。

■洗浄力試験
 いくら牛脂溶解量が大きいといっても、実際洗濯したときに汚れは落ちるのでしょうか?
実際の洗濯機と粉石けん、合成洗剤を標準使用量用いて洗浄力試験を行ってみました。

試験に用いた試料は、ポリエステル−綿混紡の布に口紅で汚れを付けた物を用いました。試験用の布を4つに切って、(1)対照(そのまま)、(2)水で洗濯、(3)合成洗剤で洗濯、(4)粉石けんで洗濯 し、汚れの落ち具合を比較しました。
 
シャーレに口紅を塗りつけます 布にシャーレを押しつけ、回転させて
口紅を付けます
布を4つに切り、洗濯機で洗います

 
試験には12種類の粉石けんと、9種類の合成洗剤を用いました。水温は、実際の洗濯する場合を想定して10℃と20℃(お風呂の残り湯を想定)としました。
 
  結果の一例です。合成洗剤より石けんの方が
汚れ落ちがいいのがわかります。

結果は次の通りです
  

 37回実験を繰り返した結果、34勝3敗で粉石けんの圧勝でした。低温では洗浄力が落ちると言われている粉石けんですが、10℃での試験でも14勝3敗でした。

 牛脂溶解量、洗浄力試験の結果はつじつまが合っており、粉石けんは合成洗剤より良く落ちるのは間違いないようです。