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クレイを使った手作り石けんは要注意


■クレイソープは人気だけど
 クレイも手作り石けんに添加する材料では人気のあるものです。苛性ソーダを使って作る手作り石けんにきれいな色を付ける色素は少ないのですが、クレイなら赤、青、黄、緑・・・好きな色を付けることができ、マーブル石けんのようなおしゃれな石けんを作ることができます。
 また、クレイにはスクラブ作用があり、皮膚に付いた汚れや皮脂を効果的に落とすことができるのも事実です。このような魅力的なクレイですが、その安全性に疑問が出てきています。クレイを使うときには、この記事も参考にしてください。


■クレイとは
 クレイ(粘土)はシリカやアルミナなどを主体とする鉱物の微粒子で、産地によってカオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マリーンクレイなどと呼ばれています。その主成分は、珪酸、マグネシウム、カルシウム、鉄、ナトリウム、亜鉛、アルミニウムなどですが、色の濃いクレイには、銅、マンガン、コバルト、クロム、ニッケルなどの金属が含まれるものがあります。
 クレイは、鉱物なので腐ることもなく、水にも溶けない安定な物質です。昔から、そのスクラブ作用を利用したスキンパック、ペースト、クレイバス、ヘアケアなどに広く利用されています。このような使い方をする分には安全面でも問題ありません。


■クレイ入りの洗顔料が眼を傷つける
 国民生活センターの調査によると、火山灰、泥、スクラブ等の不溶性の成分を含む洗顔料は、その不溶性成分が異物として眼に入る可能性あること、眼表面を傷つけるおそれがあることが指摘されています。

 http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100818_2.html

 この報告を受け、厚生労働省は2010年に、「スクラブ等の不溶性成分を含有する洗顔料の使用上の注意事項について」を公表し、注意を促しています。
その中で、スクラブ剤を含む洗浄剤には、注意事項を表示するように求めています。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000kgav.html
 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/sonota/license/g_katahe/bugaihin/scrub/index.html

 クレイを使った手作り石けんも、同じ注意が必要です。自分だけで使うときは自己責任ですみますが、他人に譲るときは、注意事項を十分説明しないと、事故につながることがあることを良く理解しておいてください。


■クレイを着色料として使う場合の安全性

 クレイを手作り石けんの着色料として使う場合は、さらに注意が必要です。
 クレイに含まれる微量の金属によって、クレイに色が付きます。クレイの種類によっても異なりますが、含まれる金属によって、以下のような色が付きます。

  鉄    : 黄色、淡青、茶色、黒
  銅    : 緑
  マンガン: 茶、黒茶
  コバルト: 青
  クロム : 緑、ピンク
  ニッケル: 褐色、淡緑色

 クレイは、通常のパックやペーストとして使うのなら、含まれる金属も水に溶け出すことはなく安全です。市販のクレイ入りの石けんは、石けん素地にクレイを練り込んでいるだけなので、クレイの中の金属が溶け出すことはありません。

 しかし、手作り石けんにクレイを使うとき、クレイは苛性ソーダと触れることになります。クレイの主成分の珪酸はガラスの成分でもありますが、高濃度で高温の苛性ソーダはガラスを溶かします。さらに、クレイは微粒子で表面積が広いので、苛性ソーダと接触する面積が多く、よけいに多く溶けます。そして、珪酸が溶けると同時に、クレイの中に閉じこめられていた金属も溶け出します。

 これらの金属は、肌にとって決して良いものではありません。一番懸念されるのが金属アレルギーです。
金属アレルギーの原因となる金属として、次のようなものが知られています

 水銀 ニッケル コバルト スズ パラジウム クロム 銅 白金 亜鉛

 もうおわかりと思いますが、色つきのクレイには、金属アレルギーの原因となる金属が含まれることがあり、手作り石けんに使った場合、それらの金属が溶け出す懸念があります。

 クレイの種類によって、どのような金属が、どれだけ含まれているかというデータはほとんどありません。
 手作り石けんにクレイを使った場合、どれくらいの金属が溶け出すかという研究は、ほとんど行われていないので、どれくらいの危険性があるのかまだ不明です。


 しかし、安全な手作り石けんを作りたいのなら、上に述べた、@クレイが眼を傷付けるおそれがある点と、A金属アレルギーのことはよく頭に入れておいてください。

 そして、使いたいクレイがあるときは、あらかじめ少量を苛性ソーダ溶液に溶かしてみてください。溶けないで、下に沈むのなら問題ありませんが、苛性ソーダ溶液に色が付くようなら、何かが溶け出しているので、使うには注意が必要です。


■クレイ等苛性ソーダの反応

 石けん作りに使うクレイや色素が苛性ソーダと反応するかどうか、簡単な実験をしてみました。実験に使った材料は@酸化鉄(黄)、A酸化鉄(赤)、Bピンクカオリン、C水酸化クロム、Dレッドクレイ、E群青(ウルトラマリン)の6種類です。



 実験方法は、材料を試験管にとり、@水、A石けん作りに使う濃度の苛性ソーダを加え、かき混ぜて1晩放置します。試験管をふり混ぜ、10分間静置した後写真を撮りました。



 それぞれの材料の写真は、左が水、右が苛性ソーダです。

 酸化鉄(黄)、酸化鉄(赤)、ピンクカオリン、水酸化クロムは、水に溶けないので、底に沈んで水は澄んできました。しかし、苛性ソーダを加えた方は濁っています。

 レッドクレイは、水と苛性ソーダはどちらも濁っていますが、色が違います。何らかの反応が起こっているようです。
 群青(ウルトラマリン)は、どちらも変わりませんでした。

 以上の結果から、それぞれの材料を評価してみます

酸化鉄(黄)、酸化鉄(赤)
 苛性ソーダと何らかの反応が起きているようです。主成分は鉄で、皮膚に対する毒性はそれほど高くないと考えられますが、石けんの酸化を促進するので、安定性の悪い油脂を使った石けんは酸化しやすくなります。ただし、酸化して黄変しても色が付いているので気づきにくいと思います。

ピンクカオリン
 苛性ソーダと何らかの反応が起きているようです。成分は不明なので、皮膚への毒性は不明です。石けんの酸化を促進するかどうかも不明です。

水酸化クロム
 苛性ソーダと何らかの反応が起きているようです。水酸化クロムは皮膚に対してアレルギーがあるとされているので、石けんには添加しない方がよい材料です。  →水酸化クロムのMSDS

レッドクレイ
 苛性ソーダと何らかの反応が起きているようです。成分は不明なので、皮膚への毒性は不明です。石けんの酸化を促進するかどうかも不明です。

群青(ウルトラマリン)
 目視では、苛性ソーダとの反応は起きていないようです。主成分はシリカ、アルミナ、硫酸ソーダ、炭酸ソーダ、硫黄などで、毒性はそれほど高くありません。おそらく石けんに入れても問題ないと考えられます。



この実験を行うにあたり Savon de Rin 様にご協力頂きました。ありがとうございました。