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石けんの酸化を防ぐ



■石けんの酸化を防止する

 手作り石けんの魅力の一つは、余計な添加物を入れないで作れる点です。しかし、本当に酸化防止剤や防腐剤を加えなくても品質は保てるのでしょうか? 保存しておいた手作り石けんが酸化して色が変わってしまった、油くさいにおいがしてきたという話をよく聞きます。石けんの原料油脂が酸化する要因をいくつかあげてみましょう。

(1) 酸化されやすい脂肪酸を多く含んでいる。
(2) 日光があたると、フリーラジカルが生成し酸化が早くなる。
(3) 空気に触れると、酸素によって酸化される。
(4) 温度が高いほど早く酸化される。
(5) 原料中に銅、マンガン、鉄、クロム、ニッケルなどの金属が含まれると触媒になって酸化を促進する。
(6) クロロフィルやカロチンなどの色素も酸化を促進する。

これらの要因を避けることができれば、酸化を最小限に押さえ、手作り石けんの変質を防ぐことができます。いくつかの方法を示してみましょう。

●石けんの酸化を防ぐには。

(1) 酸化しにくい油を使う  リノール酸やリノレン酸はきわめて酸化しやすいので、できるだけそれらの脂肪酸を含んだ油の使用量を減らしましょう。石けんシミュレーションをすると、安定性を評価できるので、できた石けんが酸化しやすいかどうか判断できます。

(2) 石けんを作るときはできるだけ金属を使わないボールと泡立て器で作ると、どうしてもステンレスの原料である鉄、クロム、ニッケルが溶け込むので、ペットボトルで作ったほうが酸化しにくい石けんが作れます。

(3) 酸化を促進する材料を入れない  クロロフィル(葉緑素)、カロチンなどの色素も酸化を促進するので、お茶、野菜などは添加しないほうがいいでしょう。もし、添加する場合は、石けん原料油脂は酸化しにくいものを選ぶようにしてください。

(4) 光、温度に気をつける  日光が当たると酸化しやすくなるので、乾燥させるときもできるだけ日光に当てないようにしましょう。また、涼しい場所で乾燥、保存することも大切です。

(5) 天然の酸化防止剤をうまく利用する
・ビタミンE  ビタミンEは化粧品の酸化防止にもよく使われています。500g〜700g程度の油脂に対して、型入れのときにビタミンEオイルを小さじ1杯程度加えたり、サプリメントのビタミンEのカプセルの中身を4個分(500mg程度)加えたりするといいでしょう。市販のラードには酸化防止剤としてビタミンEが加えられているので、ラードを原料に加えた石けんは酸化されにくくなります。また、小麦胚芽油にもビタミンEが含まれているので、これを型入れまえに小さじ一杯程度加えるという方法もあります。
・クエン酸  石けん原料中の金属とキレートを作って、金属の酸化促進作用をなくす働きがあります。耳かき1杯程度加えるだけで効果があります。
・ローズマリー抽出物  ローズマリー抽出物は天然の酸化防止剤として、化粧品にも使われています。入手が難しいので、ハーブからアルコールで抽出してもかまいませんし、粉末にして石けんに加えてもかまいません。

●石けんの酸化を防ぐ保存方法

 乾燥が終わった石けんは、ジッパー付きのポリエチレン製の袋に入れ、そこに使い捨てカイロを1個入れて保存してください。使い捨てカイロの中身は鉄の粉ですが、食品のパッケージの中に入っている脱酸素剤とほぼ同じものです。この鉄の粉が酸化されることで、容器の中の酸素をなくすという仕組みですから、石けんの入った袋の中に使い捨てカイロを入れると袋の中の酸素が少なくなり、石けんは酸化されにくくなります。袋ごと光の当たらない、涼しい場所で保管してください。こうすれば、作った石けんは長期間傷まなくなります。

 注意:使い捨てカイロは新品を使ってください。使い終わったカイロは酸素を吸収する力はありませんから、全く意味がありません。